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絶対に先が読めない!リレー形式で執筆したシナリオ「ベロー川崎」

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かつて、掲示板機能を活用し、複数人で「シナリオ」を書いたことがある。決まっているのは執筆の順番だけ。

無責任に張られた伏線はどうなるのか、意図しない場面展開に困惑する書き手たち。後半は、コーノリアス氏が奮闘するも、結局完成することはなかった。

そんな、絶対に先が読めないシナリオ「ベロー川崎」を紹介する。

絶対に先が読めない!リレー形式で執筆したシナリオ「ベロー川崎」 - ホビヲログ

ごめんなさい,長すぎて最後までたどりつけませんでした

2016/05/27 10:08
b.hatena.ne.jp
というお言葉をいただいた。長くて申し訳ない。。。

S-01.荒れ果てたビル・屋上(投稿者:ホビヲ)

 非常階段から、岡山由紀(22)が屋上に上がってくる。
 手には青色の血が付いたナイフ。
 肩で息をしている。

 周囲を確認し、小型無線機に向かって、
由紀「いま、3-Aビルの屋上!もうだめ!ヤツラがくる前にこのビルを爆破して!」
 ナイフ片手に非常階段の方を凝視する由紀。

 非常階段から異様なうめき声が聞こえてくる。

S-02.※S01のつづき(投稿者:E先生)

 目を見開く由貴。
 非常階段からもの凄い勢いで飛び出す物体。
 由貴に飛びかかる。
 由貴の悲鳴。

S-03.警視庁会議室内(投稿者:E先生)

 真っ暗な会議室に数十人の制服姿の警官たち。
 円形の巨大な机を囲むように座っている。
 モニターの砂嵐の明かりで照らし出される、警官たちの顔。

副総監「以上が情報のすべてだ」
公安1課長「これが、、すばらしい」
警視総監「そうだ、、、」
 立ち上がる警視総監。
警視総監「これが」

 画面暗転。
警視総監の声「ベロー川崎だ」
 タイトル <ベロー川崎>

S-04.凸凹病院・302号室内(投稿者:ホビヲ)

 薄暗い病室に、ベッドがひとつ。
 傷ついた由紀が寝そべっている。
 ドアの開く音。
 背広を着、サングラスをした男二人、スズキとタナカが入ってくる。

スズキ「岡山由紀くん。君はベロー川崎を見たのか?」
由紀「?」
スズキ「君を襲った化け物のことだよ」
由紀「わたし、、気を失って、、気づいたらココだったんです」
 タナカをみるスズキ。
スズキ「ベロー川崎に襲われて生き残ったのは君が始めてだ。 この一週間で8人の犠牲者が出てている。 死因はみな同じ、大きな舌でなめられたとしか思えない、圧死だ」
 下を向く由紀。
タナカ「何か思い出したらここに連絡してくれ」
 紙切れを由紀に手渡すタナカ。
 紙には『警視庁特捜部ベロー川崎対策室』と書かれている。
 部屋を出て行くスズキ、タナカ。
 ベッドから降り、鏡の前に移動する由紀。
 ゆがむ顔。
 震え出す由紀。
 口をあけると、由紀の舌がはれ上がっている。

S-05.とある公園(投稿者:U子)

 夕暮れの公園。少女がひとりブランコにこしかけている。
 周りには誰もいない。
 少女は黄色の幼稚園の制服姿。
 少女、おもむろに幼稚園バッグからスケッチブックを取り出し、広げる。

少女「今日ねえ、今日ねえ、まこはねぇ、幼稚園でお絵描きをしたの。いっぱいいっぱいかいたよ。(スケッチブックをぱらぱらとめくりながら)これがまこ、それでこれが・・・あやちゃん。それでねえ・・・これは・・・・・わかんない・・・・」
 あまりの下手さに自分でも誰をかいたかわからない少女。少女、次のページをめくる。
少女「それでね。・・・これがお父さん。まこね、一生懸命赤とね、 黒のねクレヨンがなくなるまでかいたんだよ」
 スケッチブックの絵はへたくそな絵で男か女かすらもわからない。
 しかし、異様に長く赤い舌だけがきちんと描かれてある。
少女「うまい?上手に描けてる?」
 ふいに少女のブランコが大きく動き出す。少女の後ろには「父」と呼ばれる男がいるらしい。
父の声「ああ、上手だよ。おとうさんびっくりしちゃったよ。まこは絵が上手なんだね。その絵、お家に帰ったら、飾ろうね」
少女「うん」
 ブランコからポーンととびだす少女。
 少女、着地に失敗してしりもちをつく。その瞬間、子供独特の駄々をこねるような、(注射をされるときのような)悲痛なさげび声が響く。
 少女のお尻のアップ。その、お尻の砂をぱんぱんとはたく父の手。しかし、父の姿は見えない。
父の声「大丈夫だよ、いたくないいたくない。血も何もでてないじゃないか・・」
 なおもなだめながら、パンツの砂をはたく父。その可愛らしいパンツには少女の名前が記されている。その名は、
 「川崎まこ」

S-06.凸凹病院・302号室内(投稿者:S子 )

 鏡の前に立っている由紀。
由紀「川崎・・・まこ・・・」
 ノックとともに看護婦が食事を持って入ってくる。
看護婦「岡山さん、お食事です」
 看護婦は無表情で白い顔をしている。テーブルにお盆を置きさっさと出て行く。
 由紀、ベッドに腰掛け箸を取り、恐る恐るおかゆを口に入れる。
 顔をゆがめ、吐き出す。
由紀「痛い。・・・痛い・・・舌が、うぅ」
 泣き伏せる由紀。

S-07.市街地 深夜(投稿者:E先生)

 深夜の市街地を走り抜ける一台の大型トレーラー。
 そのトレーラーを先導する、黒塗りのワゴン車。
 人影のない国道をヘッドライトが照らしていく。

S-08.黒塗りのワゴン車、車内(投稿者:E先生)

 スーツ姿の運転手、助手席の同じくスーツ姿の男に声をかける。

運転手「あれか?」
 フロントガラスに写る大きなビル。
 ひっそりと静まり返っている。
助手席の男「ああ」
 静かにブレーキを踏む運転手。
 助手席の男、スーツのポケットから通信機を取り出す。
助手席の男「先行第二小隊、現地到着。」
 車から降りる男たち。

S-09.市街地 深夜(投稿者:E先生)

 大型トレーラー、音もなく静かに停車する。
 トレーラーの荷台から静かに降り立つ何十人もの男たち。
 各自、大小の器材を運び出す。
 助手席のスーツの男のもとに集まる男たち。
 彼らを眩しく照らすヘッドライト。
助手席の男「現時点、作戦開始」
 右手を大きくあげる助手席の男。
助手席の男「展開!!」
 器材を手に走り出す男たち。
 トレーラーのヘッドライトが消え、彼らを闇が包む。

S-10.大きなビル1階・コンビニの前(投稿者:ホビヲ)

 煌々と明かりのともっているコンビニ。
 窓ガラスが割れている。
 中では棚が倒れ商品が床に散乱している。
 人影は見えず、異様なうめき声だけが聞こえる。
 重装備をした男たちが、コンビニに近づいていく。

スズキの声「ほんとにやつがいるのか?」
タナカの声「間違いない。ベロー川崎だ」

 コンビニ前で突入の指示を待つ男たち。 隊長の声「先行第二小隊、突入準備整いました」

S-11.黒塗りにワゴン車・車内(投稿者:ホビヲ)

 助手席の男、タナカが無線機に向かって指令を出す。
タナカ「0107時、突入開始」
 スズキを見るタナカ。 スズキ「吉と出るか、凶と出るか・・・」

S-12.大きなビル1階・コンビニ内(投稿者:ホビヲ)

 コンビニに突入する数十人の隊員達。
 床に散乱する商品に足を取られ転ぶ先頭の男、銃を乱射してしまう。
 発砲を機に、隊員どうしで銃撃戦。

S-13.黒塗りのワゴン車・車内(投稿者:ホビヲ)

 通信機から聞こえてくる銃声。鳴り止まない。
スズキ「・・・どうなってるんだ」
タナカ「(通信機に向かって)こちらBP、RTそっちの状況は?」
 鳴り止まない銃声。
タナカ「どうなってるんだ?」
 銃声がやむ。
隊長の声「・・・全滅です」
 顔を見合わせるスズキとタナカ。

S-14.大きなビル1階・コンビニ内(投稿者:E先生)

 血と硝煙の匂いがからまり、あたりにたちこめている。
 闇が室内を包んでいる。
 コンビニ中央、十数人の隊員達の死体らしき肉片が床に積み上げられている。
 高さにして、二メートル。
 それらの肉片の間から、血走った眼球が覗く。
 怯えたようにあたりをうかがっている。

S-15.田中家・リビング(投稿者:ホビヲ)

 ブラウン管に映し出されている「シーン14」の映像。
 番組が終り、歯ブラシのCMが始まる。
 カメラが引くと,テレビをみている4人の家族。
 田中勇二(46)弘美(45)芳江(23)太郎(14)

勇二「・・・怖いドラマだなぁ」
太郎「そうでもないよ。俺ぜんぜん平気」
 屋外で叫び声が聞こえる。
 外を見る田中家一同。
 地響きが起こる。
芳江「なに!どうしたの?」
 壁にかけられた赤色の電話が鳴る。
 立ち上がる勇二。
勇二「・・・俺の出番か」
 鳴り響く赤電話。

S-16.田中家、庭先(投稿者:E先生)

 大きな黒い生物が、ゆっくりとうごめいている。
 夜の闇に紛れ込み、その形はおぼろげである。
 一歩一歩進むごとに粉塵が辺りに吹き荒れる。
 辺りにこだまする機械音。

S-17.(投稿者:コーノリアス)

 田中家と水野家の間の狭い路地
 2HDフロッピーを右手に、携帯を右手に持った少女、理沙。

理沙「…早く…あと三回で切るからね…」
 三回目のコールで勇二が出る。
勇二「部品は全部で31個。」
理沙「30個、受け取ったわ。」
勇二「あと一個は?」
理沙「知らない。それだけしかなかったわ。」
勇二「おかしいな、残り1個は今日中に置きに行くのに。」
理沙「今日中って、あなたの所は何時なの?」
勇二「あと二時間で日付が変わる。」
理沙「ということは2時間以内にそっちで何か起きるのね。」
 部品を組み立てたらしき武器をバッグから取り出す理沙。
勇二「まさか軍団ベロ・ムーンが…!」
理沙「気をつけて。(左手のフロッピーを眺めながら)最後の部品が…ドライブが届かないことにはキーワードがインストールできないの」
勇二「分かった。一刻も早く僕らの『J・X40』を完成させよう」
理沙「ベロ・ムーンの顔が見ものね」
 電話を切り、路地を歩き去る理沙。

S-18.(投稿者:コーノリアス)

 田中家
 受話器を置く勇二。
弘美「こんな時間にまた会社の人?」
芳江「案外浮気相手だったりして」
 勇二、洋服ダンスから銀色の全身タイツを4着取り出しながら、
勇二「さあ、何も言わずに指示に従ってくれ」

S-19.(投稿者:E先生)

 東京上空を飛ぶヘリコプター。
 プロペラが風を切り裂き、爆音を響かせて飛んでいる。
 機体の側面には「東京中央テレビ」の文字。
 機体から身を乗り出すように地上の町並みに目をこらすカメラマン、やす。
 肩には大きなビデオカメラをしょっている。
 カメラのレンズの焦点を、地上のある一点にあわせるやす。

やす「こりゃ、すごい、、」

 地上の町並みを猛スピードで走りぬける人。
 ヘリからでは距離がありすぎて、正確には把握できないが
 おそらく人らしきものが狭い町並みを走り抜けている。
 その四人の人影は、そのスピードからか、銀色に光り輝いている。
 カメラから目を離し、それらの人影が向かう方角に視線をあげるやす。
 その先には、噴煙をあげてゆっくりと進む黒い巨大な物体が見える。
 思わず操縦士に叫ぶやす。

やす「タレコミは本当だったんだ!ヘリをあの化け物の近くまで飛ばしてくれ!」

 エンジン音が一段と激しくなる。

S-20.東京駅(投稿者:R氏)

 踊るようにして倒れこむ人々。みな鼻をつまんでいる。
 倒れた人々は逃げ惑う人々の下敷き。
 鼻をつまんで逃げている。
 町中に共鳴するような電子声音。
「ガスガモレテイマセンカ…ガスガモレテイマセンカ…」

 *  *  * 

 ビルの谷間に黒く巨大な物体が緩慢に蠢いている。
 巨大な物体の表面。
 皮膚が波打っている。何か小さな物体の集合体のような動き。

S-21.東京上空(投稿者:ホビヲ)

 やすの乗っている「東京中央テレビ」のヘリコプター機内。
 やすのインカムに操縦士の声が聞こえてくる。

操縦士の声「やっさん!息が出来ません。これ以上化け物に近づけません!」

 やす、カメラのファインダーから目を離し、
 化け物がいるとおぼしき方向に目をやる。
 苦い顔をするやす。
 再びファインダーを覗きこむ。

S-22.ファインダー越しの映像(投稿者:ホビヲ)

 ファインダー越しの映像。
 炎と煙の向こうになにやらとんでもない物体。
 どのようなものか確認することは出来ない。
 フォーカスがなかなかあわず、ぶれた映像がつづく。

操縦士の声「もうだめです!旋回します」
 煙の中の化け物が一瞬「でかい舌」のように見える。

 その瞬間ヘリは旋回し、化け物はファインダーからフレームアウト。

S-23.東京駅周辺の大通り(投稿者:ホビヲ)

 燃え盛る炎、空を覆い尽くす噴煙。
 阿鼻叫喚、筆舌に尽くしがたい地獄絵図となっている東京駅周辺。
 化け物から逃れようと必死に逃げ惑う人々。

 その流れに逆らい、銀色の全身タイツを身にまとった4人、  田中勇二(46)弘美(45)芳江(23)太郎(14)、が
 怪物に向かって突っ走っていく。  鼻にはティッシュがつめられている。

 勇二、走りながら怪物がいる方向を指差す。
勇二「見なさい! あれがベロー川崎だ!」
 田中家一同指差された方向を見る。
弘美・芳江・太郎「!!」

S-24.※S23のつづき(投稿者:U子)

太郎「す、すげー」
芳江「ちょっと待ってお父さん、ベロー川崎ってドラマの?さっきやってた…」
 芳江を見て、無言の勇ニ。
弘美「そうよ。芳江…」
芳江「どういうこと?何がなんだか…」
勇二「実はな…」

S-25.名古屋 石橋デンタルクリニック 外観(投稿者:ホビヲ )

 小ぎれいな建物の外観。
 看板には「石橋デンタルクリニック」の文字。
歯科医の声「うぁーすごい腫れだねぇ」

S-26.同・診察室(投稿者:ホビヲ )

 女の子の口の中を診ている歯科医。
歯科医「こんなになるまでよく我慢してたねぇ。すごく腫れてるよ」
 治療用の椅子には前掛けをしている女の子。
 診察室には心落ち着くクラシック音楽が薄く流れている。
 静寂を破るかのような看護婦の声。
看護婦の声「先生!大変なことになってますよ」
歯科医「(声の方に顔を向け)ん?」
看護婦の声「東京で大変なことに・・・テレビでやってるんですよ」
歯科医「大変なこと・・・?(女の子の方をみる)」
 不思議そうに歯科医をみつめる女の子。
看護婦の声「先生!」
歯科医「ちょっとまっててね。川崎さん」
 川崎まこのもとを立ち去り奥に行く歯科医。
 クラシック音楽だけが薄く流れている。

 *  *  * 

 いっこうに現れない歯科医にしびれをきらし、
 女の子は椅子からおりる。
 控え室に歩いていく川崎まこ。
 少し開いたドアの隙間からテレビの音がもれている。
アナウンサーの声「これをどう言葉で表現したらいいのでしょうか・・東京が・・・壊滅・・廃墟と化してしまいました・・」
 ドアの隙間から中を覗こうとする女の子。

S-27.同・控え室(投稿者:ホビヲ)

 テレビに釘付けになっている歯科医と看護婦。
 二人の間から画面をみようとする背伸びをする川崎まこ。
 テレビのモニターには空からとらえた映像、
 廃墟と化した東京が映し出されている。
 つづいて、巨大な化け物の後ろ姿の映像。
アナウンサーの声「この化け物です。この化け物が東京を・・・」
 モニターを食い入るように見つめる川崎まこ。
まこ「・・・お父さん」
 振り返りまこを見る歯科医と看護婦。
 同時に、まこの顔はゆがみ、震え出す。

S-28.警視庁特捜部ベロー川崎対策室(投稿者:コーノリアス)

 約4畳半の対策室内にタナカ・スズキ・岡山由紀がいる。
タナカ「みんな死んでいく・・・確実に。なのに、どうして君は助かったのか。たっ た一人だけ・・」
スズキ「何か隠してるんだったら教えてもらいたい。もう余裕がないんだ、岡山由紀 さん」
由紀「・・・由紀じゃないのよ。私は理沙っていうの」
 (由紀改め)理沙の表情に、異常な様子はない。
タナカ「どういうことだ?」
理沙「私は由紀と同一人物。だけど違う。パラレルワールドから来た、赤の別人なの」
スズキパラレルワールド!?」
 ぽかんと口を開け立ちすくむタナカ・スズキ。
理沙「本来全く同じ運命にある、2つの世界が関わり合いを持ったとき、必ず違いが 生まれる」
タナカ「双子でいう兄と弟みたいなもんか?」
理沙「過去に両方の世界が接点を持ったために、私という人間は別々の環境・人格・ 名前をもつようになった。それだけのこと」
スズキ「なら、そのパラレルワールドが一体何の用だ?」
理沙「ベロー川崎よ」
スズキ「あのあけぼのか」
理沙「あの化け物は、私のいた世界の・・・それも警視庁や政府のやつらがこっちに 送り出した、バイラドックスポンよ」
タナカ「?・・・もう一度」
理沙「バイラドックスポン」
スズキ「・・・なに?」
理沙「バイオ・パラドックス・ウェポン!」
スズキ「生体・・・逆説・・・・兵器。・・・かい?」
タナカ「おいおい、もし万が一、私たちが君を信じたとして、それは何なんだ?なぜ 街を破壊する?」
理沙「2つの世界がズレ始めたの」
 顔をしかめるタナカ・スズキ。
理沙「例えば時間。私のいた世界はここと比べて、急速的に時間の経過が遅くなった。 今では2時間も遅れてる」
タナカ「時差か。大陸移動でもしたか?」
理沙「まじめな話よ。これはあくまでこっちの政府の判断だけど、このままいくと私 たちの世界の負けだ、と」
スズキ「負ける?」
理沙「この世の2世界は、生存競争をしているという仮説があるの。『破綻(はたん) するとき停止する。それが世界の終わりだ』ってね」
タナカ「半分以上は意味不明だが、君のいた軍団はこの日本の秩序や何もかもを破壊 して、道連れにしようとしてるわけだね。ベロー川崎は、その手段の一つだと?」
理沙「まあ、そんなところ。ただ、ベロー川崎は、最初にして最終兵器よ」
スズキ「待った。最初の問いの答えがまだだ。なぜ生き残れた?仲間だからか?」
理沙「せっかちね。私はただ奴の『弱点らしきもの』を知ってるだけ」
タナカ・スズキ「らしきもの?」
 理沙、にやっとして足下から重厚な銃の形をした機械を抱え上げ、机の上に置く。
理沙「JX40。まだ未完成よ」

S-29.東京駅周辺の大通り(投稿者:コーノリアス)

 立ち止まって円形に向かい合った田中家。
太郎「ええっ!?じゃあ僕たち、いま別の世界に来てるの?」
勇二「そう。我々が普段ドラマとして観ていたテレビは、実はパラレルワールド
実録だったのだ」
芳江「てことは、もう一人の私にも会えるのね!きっと毎日アッシー君たちとたわむ れて、青春謳歌してるだろう私に!!」
太郎「見たい!ドッペルゲンガー見たいよう。あんな化け物のそばにいたらいつ死ぬ か知れないよ」
 化け物を指差す太郎。
 二人をにらみつけ、静かに話す勇二。
勇二「ここはな、もう何十年も前から完全な別世界なんだ」
 芳江、勇二に目もくれず、
芳江「わかってるわよ。どこにいるんだろう、もう一人の私」
勇二「こっちの世界に、おまえたちは生まれてもいないんだ」
 二人の動きが止まる。
太郎「どういうことだい?」
勇二「別々の道を進んでいると言ったろう?」
太郎「なら、父さんは・・・父さんもいないの?」
勇二「いや、こっちの私は同姓同名、タナカユウジという警視庁の特捜部隊の幹部だ。 妻も子もいない」
弘美「あなた・・・どうしてそんな・・・」
勇二「理沙って子と知り合いでね。もっとも、彼女がこっちの世界に行ってからは岡 山由紀と名乗っているが」
弘美「浮気の噂は本当だったの?」
勇二「ホエ!?・・・理沙は特殊な感受性を持った子だ。つまり大学でやってる私の 研究の被験者だよ」
太郎「とるに足らないことも突き詰めたら実はすごいことがわかるかも知れないって いう、あの研究のことかい?」
勇二「雑学学だ!!彼女はある日、パラレルワールドの自分が殺されたことに気づい た。」
 田中家の奥には、どんどん突き進んでいく化け物の姿。

S-30.菱々(びしびし)重工 応接室(投稿者:コーノリアス)

 スズキ・タナカに背を向け、窓の外を眺める工場長。
工場長「温室でぬくぬく暮らしてるはずのあんたらが、こんなスパルタ愚連隊の本拠 地に用とはな・・・」
 スズキ、「まる非(←非常事態)」と書かれた封筒を取り出しつつ、
スズキ「事態は急を要します。ご協力を」
工場長「やらねえとは言ってねえ。隊長さん、俺はなぁ、あのベロの化け物もかわい そうな生き物だと、なんかそんな気がして仕方なくてよ」
タナカ「私に同情の余地はありません。今この瞬間も犠牲者がうなぎ登りに増え続け てるのです」
 少しの沈黙が流れる。
工場長「野郎ども!!」
野郎ども「へい!(わっと10数人が入室してくる)」
工場長「運がわるけりゃこれが最後の仕事よ。よけりゃあ、みんな英雄だ。菱々重工 の根性と人情、かましてこうや!!」
野郎ども「へい!!」
 工場長、受け取った封筒の中にある図面を勢いよく机に広げる。図面には「JX 40’(ダッシュ)」と書かれている。

S-31.名古屋 石橋デンタルクリニック 控え室(投稿者:コーノリアス)

 恐怖におののいた表情の歯科医と看護婦に、巨大な影が迫る。
歯科医「な・・なんだ?」
看護婦「・・・化け物だわ。まこちゃんが化け物になったわ」
 歯科医、地面低く頭を抱え込み、
歯科医「こ、こわい~!殺される!!」
 影の主は、2メートルほどの巨大な一枚の歯。
歯科医「わかった、わかったぞ。おまえ、歯のたたりだろう。私に仕返しに来たんだ」
看護婦「い、院長・・・」
歯科医「そうさ、えへえへ。老人の残り少ない歯をすべて抜かせ、高級入れ歯を売り つけたよ。間違って隣の歯を治療したときも『こっちも虫歯ですね』なんて言ってご まかしたっけな。あいつ喜んでたよ、ばかだなぁ。治療に時間をおいて虫歯の進行を 完全には止めないように?そんなの日常さ。うふふふ」
歯(まこ)「お父さんが・・・苦しんでる」
 ハッとする看護婦。
看護婦「あなた、本当にまこちゃんなの?」
歯(まこ)「辛いつらいって、聞こえるの」
 言い終えると、歯(まこ)は上下に激しく振動し始める。
 振動でクリニックの床を破壊し、さらに建物を砕きながら東京に向かって一直線に 向かう歯(まこ)。
歯科医「えへへへ。(標本に向かって)白い歯だねえ、美しいひひ・・」
 呆然と歯科医を見ていた看護婦、ふとテレビの巨大な舌に目をやる。
看護婦「まるでドラマの世界だわ・・・」

S-32.警視庁会議室内(投稿者:コーノリアス)

 警官の官僚たちが巨大な円卓を囲んで、中華料理を食べている。
 公安6課係長があわてて入ってくる。
係長「大変です。化け物が現れました!!」
公安1課課長「何を今更。ベロー川崎の動きはすべて把握している。予定通りだ。そ れよりも食事の邪魔だよキミィ」
副総監「そうそう。ベロー川崎の暴飲暴食ぶりを見ていたら、我々も腹が減ってね」  官僚らの低い笑い声が部屋中に響く。
係長「違うんです!」
副総監「なにがだネ?」
係長「現れたのは、未確認の怪物です!それも、こちら側の世界に!!」
一同「なにい!!」

S-33.東京駅周辺の大通り(投稿者:コーノリアス)

 田中家が会話している。周りは壊れた建物と肉片しかない。
太郎「お父さんって、何者なの?」
勇二「私はかつて、発明王を目指していた。みんなが幸せで便利な世の中を夢見てい た。しかし作るもの作るもの全部、人に迷惑なものになってしまうんだ」
弘美「あなた!!」
勇二「気がつけば私は『ハツアン王』と呼ばれるようになった。アンは『暗い』って いう字だ」
芳江「発暗王・・・」
弘美「昔の話よ、あなた」
勇二「自分の才能に絶望しつくしていた頃、私に声をかけてきたのが政府や警視庁の 裏の組織、ベロ・ムーンだった」

S-34.回想 田中家 十数年前の昼(投稿者:コーノリアス)

 居間で横になって眠っている勇二(29)。
 突然上がり込んでくる黒服の集団。
黒服1「起きてください。田中勇二さん」
 寝ぼけている勇二。
黒服2「この世界を救うために、ぜひ力になっていただきたいのです」

S-35.回想 秘密の研究所内(投稿者:コーノリアス)

 注射器を手に白衣を着た勇二(32)、手術台におとなしく横になっている男。
 二人を監視している黒服の女。
勇二「いいですか?カワサキさん」
「はい」
 勇二が注射針を刺そうとした瞬間、男の手が勇二の腕を握る。
「田中さん、本当にこれでいいんですよね?世界が救えるんですよね?」
勇二「もちろん。私だってそう聞いています」
「あなたを信じています。でも、万が一・・・何か間違いでもあったらその時は・・ ・田中さん、あなたが私を殺してください」
 黒服の女が会話をさえぎり、近寄る。
黒服「速やかに作業を進めてもらえますか?」
「(小声で)私、今度結婚するんです」
勇二「(驚いた顔をしているが、軟らかい表情になって)おめでとうございます、カ ワサキさん」
 注射器の液体が、男の腕の中に入っていく。

S-36.東京駅周辺の大通り(投稿者:コーノリアス)

太郎「じゃあ、あのベロー川崎は父さんが作ったの?」
勇二「いや、その日を期に、私はメンバーから外された。研究だけが悪用される道に むかっていき、心ない連中によって完成したのだ。どのみち、私の発明品なんか、一 つもろくなもんがなかったのさ」
芳江「そうかしら?」
 3人、芳江に注目する。
芳江「お父さんの作ったものには、少なくとも2つ、最高傑作があることを証明して あげる」
勇二「なに?」
芳江「太郎、行くわよ、とりあえずベロー川崎に追いつくのよ」
 走り出す太郎と芳江。
勇二「最高傑作って、なんだ?」
弘美「(目に涙を浮かべて)あの子たちったら・・・」

S-37.田中家 庭先(投稿者:コーノリアス)

 庭の地面が盛り上がってえぐれた間に、巨大なねずみ取りマシーンがある。
 中には、黒服の男が捕まったまま気絶している。
黒服「(気がつく)うう・・・はっ!」
 周囲を見回し、田中家宅を見ると、明かりが消えている。
 黒服、携帯電話を取り出し発信する。
黒服「もしもし、こちら、黒服の男です。田中家の監視をしていたのですが・・・ま かれてしまいました!・・・はい、はい・・ええ。」
 地響きが起こる。
 きょろきょろする黒服。
 遠くに何かを見た。
公安1課課長の声「どうした、なぜ黙ってるんだ」
 黒服の表情が恐怖に染まる。

S-38.警視庁会議室内(投稿者:コーノリアス)

 電話で黒服と話し中の公安1課課長。
黒服の声「来る、こっちに来る!」
公安1課課長「何が来てるんだ?」
黒服の声「来るなあぁぁぁ」
公安1課課長「そいつは、一体、どんなやつだ?」
黒服の声「ハダアアアァァァァ!!ギャ」
 電話がとぎれる。
 沈黙に包まれる会議室内。

S-39.東京駅周辺の大通りのちょっと先(投稿者:コーノリアス)

 芳江と太郎が高層ビルから、下のベロー川崎を見下ろす。
芳江「あの生物の特徴は?」
太郎「全身舌だ。人間を食べ、すごい早さで吸収する」
 鼻に詰めたティッシュを一瞬だけ外し、臭いをかぐ芳江。
芳江「(顔をしかめながら)この臭いは何だと思う?」
太郎「奴の唾液の臭いだね。まず唾液をかけて、人間を柔らかくするんだ。そして一 気に押しつぶして食べる」
芳江「わざわざ?」
太郎「だって、あんなに食べるくせに『歯』がないんだ。きっと辛いだろうなあ」
芳江「父さんの話で同情を?あれはもうカワサキさんでも、人間でもないわ」
 芳江の銀のスーツに付属のスピーカーから勇二の声がする。
勇二の声「聞こえるか?芳江、太郎」
芳江「追いついたわ。どうすればいい?」
勇二の声「我々のスーツは『耐液コーティング』されてる」
太郎「なにそれ?」
勇二の声「ベロー川崎の唾液がかかっても溶けない」
芳江「そうだったんだ。そして?」
勇二の声「川崎君は元々、相当なグルメだった」
芳江「はぁ?どういうこと?」
勇二の声「鳥肉、ラーメン、石狩鍋、その他いろいろ。『食べちゃうぞのおじさん』 という異名もあった。しかし、ハンバーグだけは大嫌いなんだ。あの挽肉の感触が嫌 いなんだと」
太郎「何言ってんだよ、こんな時に」
勇二の声「スーツには、ハンバーグの味付けを施してある」
 黙って考える芳江。
芳江「ねえ、それって何が言いたいの?」
勇二の声「人間の中には挽肉みたいな奴もいると思い知れば、彼も食べるのをやめるだろう」
弘美の声「ちょっと」
太郎「つまり・・・」
勇二の声「食べられろ!!」
弘美の声「信じちゃダメ!!」

S-40.菱々重工 重機工場内(投稿者:コーノリアス)

 完成したJX40’を取り囲んでいる作業員たち。
 JX40’はJX40より一回り大きい。
 得意顔でその光景を眺める工場長。
工場長「(タナカ・スズキに)あとは、おまえさんたち次第なんだろ?頼むよ」
 静かにうなずくタナカ・スズキ。

S-41.東京近郊(投稿者:コーノリアス)

 破壊的直進を続ける歯(まこ)。
 自衛隊の戦闘機が複数、歯(まこ)めがけてミサイルを乱射する。
 ミサイルが地上に落ちるたび民家が粉々に吹き飛ぶ。
操縦士「いったい何のためにこんなことを!」
無線の声「考えるな。どんな犠牲を払っても、あの白い化け物を倒せという命令だ」
操縦士「くそう、官僚どもめ!!」

S-42.警視庁会議室内(投稿者:コーノリアス)

 会議が行われている。
公安2課課長「憶測だが、向こうの世界から送られてきた兵器との見方もある」
公安3課課長「まさか!パラレルワールドの存在すら知らない彼らが?」
公安4課課長「あの白い歯の目的地は一体どこなのかねえ」
公安1課課長「単純に東京へ向かってる。一直線にだ」
公安5課課長「ならもっと細かく予想させてくれたまえ」
公安1課課長パラレルワールドのベロー川崎がいる地点、それと同位置を目指して いるというデータが割り出された」
他一同「な、なんと!」

S-43.東京駅周辺の大通りのちょっと先(投稿者:コーノリアス)

 下を見下ろしてハッとする芳江。
芳江「ベロー川崎の様子が!さっきまでと違う」
 一緒にのぞき込む太郎。
 ベロー川崎は移動をやめ、巻き舌形状になる。
太郎「お、落ち着いたのかな?」
 突然「びろびろびろびろびろ!」とけいれんをし始め、振動でものすごい音を出す ベロー川崎。
芳江「何が起こったの!?」
勇二の声「聞いたことがある。川崎君には数年前から、子供がいたと」
 ベロー川崎の周りが光に包まれる。
芳江「もう説明はいいから、何をするかだけ言って」
勇二の声「二つの世界に引き裂かれた親子が、次元を越えて呼び合っているんだ」

S-44.もう一つの東京(投稿者:コーノリアス)

 歯(まこ)が目的地点に到着した瞬間、衝撃波が起こる。
 東京の街中の窓ガラスが粉々に割れる。

S-45.東京駅周辺の大通りのちょっと先(投稿者:コーノリアス)

 (シーン41の続き)
太郎「どうなるんだよ」
 空間中に電光が走り、激しい風が起こり出す。
 風による共鳴で、ビルが崩れ始め、芳江らの高層ビルにもヒビが入る。
勇二の声「我々が使った、異世界への小さな小さな入り口。あれを東京のど真ん中に でかでかと作る気かも知れない」
芳江「そんなことができるの!?」
勇二の声「怪物なら何ができても驚くことはない。問題は・・・」
芳江「問題は何?」
太郎「問題はその後だ!」
 一瞬でベロー川崎の周辺が深い暗黒に覆われる。
 そして風圧とは違ったものが勢いよくはじげとぶ。
 芳江らのビルも静かに倒壊し、二人は光に包まれていく。

S-46.同 廃墟同然の状態(投稿者:コーノリアス)

 太郎が目を開けると、巨大な舌と、歯がたたずんでいた。
太郎「子供って・・・歯だったのか」
芳江「起きなさい!太郎!あなたの言ったことがあたってたら、これからが地獄よ」
太郎「言ったこと?」
芳江「舌が、歯を手に入れたのよ」
太郎「そうか!!もうベロー川崎に食べられないものはない!!」
 そばに歩いてくる勇二・弘美。
弘美「無事ね」
 勇二のスピーカーから理沙の声。
理沙の声「田中さん?田中さん?」
勇二「やあ、理沙ちゃん。なんだい」
理沙の声「こっちの世界にいるのね。今完成したやつを、特捜部のタナカさんたちに 運んでもらってるわ」
勇二「JX40か、よかった。完成したんだ」
理沙の声「いいえ、JX40’(ダッシュ)よ。彼から受け取って。本人同士の初対 面ね」
 その時大型車が田中家のそばに停車する。

つづく(かもしれない)。


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